【風を読む】論説副委員長・五十嵐徹 注意要する交通基本法
2010.4.20 07:43
鳩山政権が交通運輸行政の憲法にと意気込 む、「交通基本法」制定の動きが、新たなバラマキ政策につながりはしないか心配だ。
先月30日に国土交通省が発表した中間整理によれば、「人口減少・少子高齢化の進展、地球温暖化対策等の諸課題に対応するため」の公共交通機関のあり方を 示すことが、基本法制定の趣旨だとしている。
具体的には、国民一人一人には自由に移動する権利(移動権)があると規定。移動手段が制限さ れがちな高齢者や障害者にも安全・安心な交通手段を提供し、環境にも優しい交通体系の実現を目指すという。
高邁(こうまい)な趣旨であ り、バリアフリー化を含め、交通弱者の日常生活の障害を取り除くため、国を挙げて 共助の精神で取り組む環境を整えるという考えにも異論はない。
気になるのは、「移動権」を「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために 必要な憲法の基本的人権のひとつに位置づけていることだ。実現には 国や自治体、国民が一致して取り組む責務をうたっている。
言い換えれば、離島や中山間地な ど交通過疎地の 住民や自動車の運転などが物理的に困難な人た ちが、民間のサービスを受けられない場合は、公費によって移動手段を確保する義務が生じるということである。
もちろんあくまでも可能性と しての話で、そうなるかどうかは今後の条文化や制定後の運用にもよる。
交通基本法は、民主党が野党時代から社民党とともに成立を目指して きたもので、もともと社会福祉的な色彩が濃い政策とされてきた。国交省は辻元清美副大臣が中心となり、来年1月の次期通常国会 に提出を目指して法案化を急いでいる。
だが、法理念の実現には新たな財源が不可欠だ。民主党が掲げる高速道路の原則無料化政策との矛盾に ついても説明が必要だ。
